|
九月に工場閉鎖となる三菱自工大江工場から、子会社の私の工場に、出向者が配属された。現在、組立、溶接あわせて百人ぐらいが来ている。今後の生産ボリューム次第でどうなるかわからないが、九月までに総勢約五百人が移ってくる予定だという。しばらくの間はラインのスピードを落として、つきっきりで作業を教えている。
本社工場とはライン作業のやり方が違うし、スピードもかなり速いので、配属されてきた労働者はきつそうにしている。五十歳を過ぎた年配の人はラインに入らず、組立工程のために取付部品を順番に並べる「序列」などに配属されているが、覚えなければならない部品点数が多くて慣れるのが大変だ。ラインスピードは二週間後、一カ月後に次第に上げていく。
本社工場と、私の工場は県をまたぎ約五十キロ離れている。今のところ、もともと私の工場の近くに住んでいた労働者が多く来ているようだが、中には朝の就業時に電車を乗り継いでも間に合わない人もいる。そうした労働者は、単身赴任で寮に入って週末に帰る生活を始めている人もいる。三十歳過ぎの労働者は「子供は三つ。かわいい盛りなのに。家で何かあってもすぐに帰れないし…」とこぼしていた。
「もといた工場は閉鎖になる。他の工場は生産が落ちている。ここに来たからにはもう戻るところはない」と覚悟をきめて来ているのだ。だが、この工場だって、今後どうなるかわからない。
工場閉鎖になっても、雇用は守っていると会社や組合が言うのはウソだ。本音は気に入らなければ辞めてくれということだ。現に、本社で聞いていた条件とは違うことばかりだそうで、もうすでに移ってきた人の中に、「頭にきた。耐えられないから辞める」という人が出てきている。
本社では最近また新たなリストラ計画を出し、千人規模の希望退職を募り始めたという。本社の労働者はこの二年ほど減産で残業がなくなり、収入が激減しローン払いに苦しんできていた。退職金を上積みされれば、みな飛びつくように辞めてしまうのではないか。こんなふうに扱われてなぜ黙っているのだろうか。私は不思議でならない。どうして反発しないのか。
先日、就業前に本社からの労働者に、どんなつもりかと聞いてみた。そうしたら意外なことに(いや、皆そう思っているのかもしれないが)、こんなふうに言ったのだ。
「これだけやられて組合はストを打たないようではダメだ。会社の提案をそのまま受け入れて何のための組合だろうか。組合の体質が悪い」。これまでストを打ったことがない御用組合の中にもこうした労働者がいる。
闘いはこれからだ。
ページの先頭へ
|