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わが国は米国から自立せよ

アジアと共栄共存すべき

拓殖大学海外事情研究所助教授・吉野 文雄氏に聞く




 どのようにアジア経済危機を克服するかをめぐって、米国と国際通貨基金(IMF)の政策に対する批判が高まっている。先のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でも米国とアジア諸国の対立が鮮明となった。日本はアジアでの主導権確保を狙って「宮沢構想」で三百億ドルのアジア支援策を打ち出したが、日本がどのような役割を果たしたいのか、明確なビジョンを打ち出さない限り、アジアの信頼は得られない。米国孤立化の背景、日本のはたすべき役割について、ASEAN経済に詳しい拓殖大学海外事情研究所助教授・吉野文雄氏に聞いた。


 十一月中旬のAPECでは、米国の孤立というか、米国だけは別だということが鮮明になった。クリントン大統領も、事実上意図的に欠席した。

 経済危機で、米国にとってアジアが魅力的な地域ではなくなったということもあろうが、米国は危機が中南米にも及んだことでアジアにまで手が及びにくくなっている。このため、米国のアジアでの影響力は現実に低下しており、アジアでは米国の思い通りにはいかない、という孤立感が出てきていると思う。林・水産品の自由化問題でも、日本の主張が受け入れられた形になった。

 ヘッジファンドの規制問題でも、米国は孤立した。

 マレーシアのマハティール首相は、九月に通貨リンギットを固定相場制に戻し、為替管理を強化した。これは必ずしも短期資金そのものの移動を規制しているわけではないが、ヘッジファンドなどを規制しようという意図は明らかだ。ただ、どれくらい実効性があるかは疑問で、一年以上続けるのは難しいだろう。

 しかし、世界的に論調が変わってきた。八月のロシア危機、九月にヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破たんが明らかになり、米国内でも、少なくとも短期資金の投機的な移動を見直し、透明性を高めなければならないという合意はされていると思う。

 クルーグマン・マサチューセッツ工科大学(MIT)教授、バグワッティ・コロンビア大学教授も、現時点での規制を肯定しており、国際的に資本移動規制が正しいという動きになっている。

 日本も投機資金を批判しているように見えるが、投機資金を動かしているカネには、日本の大企業のカネも入っている。大企業は投機で為替相場が変動すると損が出るというが、そのカネはもともと企業のもので、ヘッジファンドには日本の生命保険業界が多額のカネをつぎ込んでいる。

IMFの国民犠牲策は誤り

 アジア経済危機に際し、IMFが融資と引き替えに過酷な条件を押しつけ、国民各層に失業などの犠牲を押しつけている。これには、問題があったと思う。IMFの政策は結局、為替を引き下げ、国内経済を引き締めてインフレを抑えるということだが、十分な資金を融通してはじめてそれが可能なのであって、IMFにはもはやその力はない。IMF自身に準備金がなくなっている。

 とくに、そうした引き締め政策を今年にまで持ち越したことに問題がある。危機に陥った各国は、通貨危機から金融危機に派生したわけだが、IMFはまず金融を立て直そうとして、金融機関を選別し、不健全なところをつぶしたり、残すべきところに融資したりした。これは不適切なものだった。

 なぜなら、アジア各国では金融自体が十分に動いてはいないので、それを立て直しても、先進国のように健全な金融市場ができるわけではない。金融市場のレベルが、そもそも日本や米国とは違う。IMFや米国は「金融システムがもろいから、グローバルスタンダードにもっていかなければならない」と言うが、体力が弱っているとき、けがをしているときにそれをやる必要はない。

 アジア諸国でIMFの融資を受けた国々は、みな財政赤字ではなかった。それまで高成長を続けていたわけで、税収はあったし、財政規模も大きくない。それを危機だから引き締めろというのは問題で、むしろ、国民への犠牲転嫁を避けるために、財政を拡張すべきだった。各国政府は切りつめを要求されたが、当時のインドネシア・スハルト政権はIMFに抵抗し財政拡張路線を打ち出した。いま考えれば、この拡張路線でやるべきだった。実際、今夏になり、マレーシアやタイも補正予算を組んで経済対策を打ち出している。

 一方、十一月にまとまったIMFのブラジルへの融資は、「新しい基準」などといいながら、アジア諸国への融資に比べると条件が緩い。ブラジルこそ、財政赤字の問題があったが、米国が担保を出したということだろう。米国とすれば、自国の裏庭だから、影響が自国に及ぶことを恐れて条件を緩くしたのだろう。

格差是正に役立つ支援を

 昨年日本はアジア通貨基金を打ち出したが、米国の反対で断念した。

 それが今年、宮沢構想で三百億ドルを拠出することになった。これは、日本の勤労者一人当たり、約六万円がアジア各国に出ていくことになる。受け取るアジア各国にとっては、ないよりあった方がよいのが当然だが、それだけのメリットが日本にあるのか疑問だ。日本の経済全体の状況からして、大規模なアジア支援は難しい面がある。

 むしろ米国は「粉飾決算」のようではあるが、「財政黒字」だと言っている。それなら、そのカネをアジアに回せと日本が言えばよい。それを投資資金としてアジアにばらまく。日本はこのようなコーディネーターの役割ができたのではないか。

 アジア各国では、発展しているのはまだまだ首都周辺だけだ。周辺地域の所得は首都周辺の五〜十分の一にすぎないように、国内の格差が非常に大きい。タイの東北部はがく然とするくらい貧しいし、フィリピンもミンダナオ地方は貧しい。マレーシアのサバ・サラワク地方は、首都のクアラルンプールとはまるで別世界だ。そういうところに、日本が大規模事業をやれば、経済成長や生活水準の向上に役立てられる。

 米国も単独で五十億ドル、日米で五十億ドル、アジアに援助するという。これは、日本に対抗するものであることは明らかだ。アジアを日本だけに任せてはまずい、ということだろう。このような時期だからこそ、日本の態度が問われている。

 だが、アジアからすれば、日本がアジアの中で何をしようとしているのか、ビジョンが見えないのではないか。アジアからすれば、どこまで日本につき合うか、判断しにくいのだろう。

 もっと日本は米国から自立し、困難な時期だからこそ、アジアと共存共栄すべきだ。中国の経済動向も不透明であり、今後のさらなる危機にそなえ、日本はアジアと手を結んでいく必要がある。


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