981105


東京財政危機問題

法人2税の引き上げ

自治体は超過課税を実施せよ

都留文科大学講師・日比野 登氏に聞く




 東京都は十月十三日、都財政の危機を訴える「緊急アピール」を発表した。神奈川県、大阪府なども、同様の事態となっており、住民に対し必至に財政危機を訴えている。これを口実に、各自治体では住民サービスの切り捨て、職員削減など、犠牲の押しつけが始まっている。これを許さない運動を盛り上げ、地方財政で住民の要求を実現するために、自治体や政府と闘うことが求められている。美濃部都政下で新財源構想研究会事務局長を務めた、日比野登・都留文科大学講師に、地方財政問題について聞いた。


 東京都や大阪府、神奈川県などが財政危機に陥っている。今年度、東京が四千四百億円、大阪と神奈川が約千二百億円、愛知が九百億円くらいも税収が不足するといわれている。

 ここでいわれていることは、不況が長引き、企業からの税収見込みが大幅に減ったというものだ。大都市部には大企業がたくさん所在するため、景気の影響が大きい。七三年の石油ショック時と同じ現象だが、今回の事態は規模が大きい。

 長期にわたり不況が続いているので、自治体の税収は八七、八八年頃の水準しかない。税収はバブル崩壊頃まで毎年上がったが、その後、税収減が続いている。それでも、そんなに大幅に減ってしまったということはない。つまり、バブル前に戻ったにすぎない。予算に計上した収入が確保できなかったということだ。

 今年度当初の政府成長見通しは二・四%だったが、マイナス成長に修正せざるを得なくなった。地方自治体は地方財政計画にそって税収を予想するので、成長が見込み違いで収入が減れば、政府は地方交付税を出している自治体には、不足分の手当をしなければならない。

 東京都の場合、現在都道府県で唯一、地方交付税をもらっていないので、このような時には国の許可を得、減収補てん債という地方債を起債する。

 地方債は本来、実際の事業があり、それに見合った形で許可される。だから、減収補てん債も、形式的に事業に見合った形にして起債している。

 東京都は、鈴木都知事時代に臨海副都心構想など大規模な建設事業を行い、地方債を膨らませた。現在はそれを半分にするということで、事実、減ってきた。つまり、建設事業自体が減ったので、それに見合う減収補てん債の発行可能額も減り、以前は二千億円くらいだったが、今回は一千億円くらいだという。

 しかし、公共事業は全国的に減っており、減収補てん債はますます発行できなくなる。宮沢蔵相は「(事業の見合いがまったくない)赤字地方債でもよい」と言っているが、これはいずれ、都民にツケをまわすことになりかねない。

住民が声をあげることが重要

 つまり、今回の財政危機の原因は、税収が減ったのが第一だ。

 また、見込みのない大規模事業を行ったことも大きい。臨海副都心や有楽町の国際フォーラムなど、鈴木都政時代の大型のハコ物は税金からばく大な維持費を支出しなければならない。また、第三セクターも赤字だらけで、今後何十年も都が税金から補助金を出していかなければならない。都財務当局は投資的経費を鈴木都政時代の半分にしたが、青島都知事は都市博を止めただけで、臨海副都心事業をはじめ官僚まかせだ。

 結局、都政は今後、住民サービスの切り捨ての方向に向かうだろう。美濃部都知事時代から、東京は福祉政策は進んでいるが、それら老人医療、付き添い看護、保育所などに、その計画が出てくるのではないか。 こんな事態は戦後初めてで、相当のしわ寄せが出てくるだろう。青島都知事も問題点を都民に知らせ、都民の運動が起きるようにしてくれればよいが、そういうこともできない。これらは政治の問題で、政党が福祉など住民サービスを守れとがんばればよいが、期待できない。都民全体が声を上げなければならない。

自治体は財政自主権で国と闘え

 地方分権推進委員会が勧告を出したが、評価できない。機関委任事務の廃止など、評価する人もあるが、官僚制度の枠内で、各省庁がイエスといったことだけを勧告しているに過ぎない。肝心な財政については、ほとんど手をつけられなかった。

 本来、自前で責任を持たされて、税金を自分でとるというのが地方自治だ。自治体側もそれをやろうとしていないし、住民は実態を知らないので、ピンときていない。要するに、議論されていない。そこへ危機が進行しているから、ほとんどの自治体は、国の傘の下で面倒を見てもらおうと思っている。

 実は九八年度には法人税が減税されているので、地方税である法人住民税は法人税の何%という税だから、法人住民税も自動的に下がってしまった。法人事業税も長らく一二%だったが、今年度から一一%になった。

 国はさらに法人税を減らし、法人事業税も減らすという。そもそも地方税を政府が決めることが、地方自治に反することであるが、この事態で政府が自治体に大幅なしわよせを強いるのは、実にけしからんことだ。

 東京もきちんと計算すれば、地方交付税をもらってもよい状況なはずだ。しかし、国には絶対に東京都には交付税を出さないという「鉄則」があり、査定を操作して交付税をよこさない。

 この解決のためには、一つには、国に「交付税をよこせ」ときちんと言うべきだ。大阪も愛知も神奈川も地方交付税をもらっているから、東京だけが交付税をもらわないでもよいという財政であるはずがない。よこせということで、東京都も同じ状況に追い込まれているということを訴えるべきだ。

 もう一つは、課税自主権だ。現在でも課税自主権はあり、自治体が独自に税を上げることもできる。美濃部都政は、事業税を一二%から一四%に上げた。ところが政府が怒って、当時上限がなかった法人事業税にプラス一割という天井をつくり、一三・二%に上限を設定してしまった。今年度は法人事業税を一一%にを下げたので、上限の税率も下がってしまった。政府が地方税に上限をつくることは、課税自主権を犯すものであるが、ともかく上限までは引き上げられる。

 消費税が五%になり、うち一%は地方消費税となっている。このような、あとからできた税金は、地方が独自に課税できないようになっている。だが、多くの地方税には、上限はあるにしても、税率引き上げ(超過課税)など、まだ自治体の自主性がある。それが財政自主権だし、課税自主権だ。都民税も区民税も、自己防衛のために自主権を行使することができる。美濃部都政は、石油ショックのときにそれをやった。

 青島知事は、この美濃部都政の自主権行使を知っているのだろうか。都の官僚は教えていないのだろう。青島知事は、美濃部都政のこういう実績をよく学び、安易に支出を削るのではなく、権限を行使し、住民とともに国と闘うべきだ。

 東京都がこういう姿勢をみせれば、他の自治体も、美濃部都政が法人住民税を超過課税したときのように、見ならうものが増えてくるだろう。


ひびの・のぼる

 一九二八年生。東京大学法学部卒。五三年都庁入庁後、七二年、美濃部都政下で東京都新財源構想研究会事務局長。八七年より都留文科大学教授。九二年より同講師。著書「財政戦争の検証」(第一書林)。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998