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労働者派遣法改悪に反対を

労働者がレンタル制に

日本労働弁護団幹事長 徳住 堅治氏に聞く




 政府は十月六日、派遣労働の全面自由化を盛り込んだ労働者派遣法改悪案を国会に上程した。これは資本の都合で労働者の権利を保障しないまま自由に使い、自由な使い捨てを可能にするものである。大企業は国際的な大競争に打ち勝つため、すでに労働基準法を改悪し、さらに派遣法改悪でますます労働者の権利を奪い、低賃金を押しつけようとしている。日本労働弁護団の徳住堅治幹事長に聞いた。


 派遣労働はこれまで、ソフトウエア開発などの二十六業種に限られていたが、今回の改悪案では港湾、建設、警備を除いて完全自由化となる。製造部門については当面の間、禁止される(禁止期間は約三年といわれている)が、将来は開放しようとしている。

 そもそも派遣労働は、労働者のレンタル制だ。CDやビデオのレンタルと同じで、派遣元が労働者を雇い、それをレンタルして稼ぐ。だから、使う派遣先企業は、CDやビデオを使うお客さんと同じで、使い方も使い捨ても自由というのが、派遣労働の本質だ。

 今回の改悪案では、そういう労働者のレンタル制を、日本のあらゆる職場で許すことになる。これが第一の問題である。

 現在、約七十二万人の派遣労働者がいて、九割は女性だ。男性の賃金は平均約三百九十万円で、女性は百九十九万円程度だ。専門性をなくした派遣が入ってくれば、低賃金の派遣労働がいっそう進む。これまでの正社員を派遣労働者に切り換えていくという動きが急速に強まり、労働者全体の賃金が相当に安く押さえつけられることになる。

奪われる労働者保護

 もう一つ、労働者保護の問題がある。

 一つはプライバシー保護の問題。派遣元企業は、性別、年齢、学歴、もしかしたら考え方、思想など労働者のいろいろな情報を持っている。個人の情報というのは使い方しだいで差別や人権侵害を生む。しかも派遣元企業が持っている情報がいろいろなところに流れている問題もある。そうした派遣元に関する規制、プライバシー保護に関する規制が不十分だ。

 また、派遣先企業の責任と横暴を規制する法文が、このなかにほとんど見られない。派遣契約をいつでも中途で切れる。現行法では、信条などを理由に契約を解除してはいけないとなっているが、「明日からいらない」という理由での解除は認められている。しかし、契約中途で切った場合の派遣先の責任や派遣先企業に対する規制がまったく行われていない。

狙いは派遣の完全自由化

 今回の改悪案は、臨時的、一時的な雇用の需給対策として、全面自由化するとしている。一時的というなら、例えば労働者が病気で休んだからそのための労働というものに限られてくるはずだ。臨時的、一時的といいながら、おそらく長期の派遣労働を狙っていると思う。法案の中では、一年を超えた場合については、正規雇用にしなければいけないとなっているが、それは単なる努力義務でしかない。

 そういう点では、労働基準法の改悪以上に、労働者にあたえる影響は格段に大きい。労基法改悪は、たしかに裁量労働制が入って、労働時間について規制緩和が行われたが、あれは雇われた労働者の働き方の中身の問題だ。派遣法は雇用そのものの規制緩和だから、その影響は大きい。

ますます女性に犠牲が

 特に女性労働者に与える影響は圧倒的に大きいと思う。女性の場合は、もちろん低賃金の問題もあるが、派遣労働の場合、育児休暇、産前産後の休暇もほとんど行使できない。また、深夜労働などがどんどん導入されていくので、女性に与える影響は、女子保護規定の撤廃以上に大きいのではないかと思う。

 その典型がアルバイトスチュワーデスだ。導入されてまだ四、五年だが、すでに五千人ものアルバイトスチュワーデスがいる。その平均賃金は、年間二百六十万円に過ぎない。正規のスチュワーデスが五〜七百万円だから、会社としては一人数百万円の利益を生む。

 だが、これだけ不景気の時に派遣労働者を入れるというのは、経済の発展に逆行すると思う。労働者の賃金を下げれば消費は落ち込み、景気はさらに悪化する。経営側は「(派遣は)この不景気に雇用を創出する」というが間違いだ。社会の仕組みから考えるべきだ。

派遣は社会を変えてしまう

 労基法改悪は、あらゆる職場に影響するということで、労働者はピンとくる。ところが今回の場合は「おれは派遣労働者のことは関係ないよ」という意識が強い。労働組合も、ほとんど派遣労働者を組織していないので、あまり取り組まれていない。

 派遣労働者の全面自由化が認められると、自分たちや同僚の職も、あるいは子供の時代にも、正社員としての地位を失っていく。社会自身が構造を変えていくことになる。そうした理解を深るために、われわれも努力する。

 国会議員は労働者側の生活実態や、労働法の仕組みを知らない議員が多く、専門的な問題を理解できない。われわれも説得活動を続けるが、国会議員もしっかり国民的議論を展開して、そのなかで正しい道を選択してほしい。

 労基法改悪反対の時に、初めてナショナルセンターの枠を超えた連携運動ができた。派遣法改悪を許さないために、一歩進めて共闘関係を強めた反対運動が展開されることを願っている。


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