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安保破棄こそ日本の安全保障

東アジアに緊張生む新ガイドライン

元防衛研究所第一研究室長・前田 寿夫氏に聞く




 日米両政府は九月二十日、日米安全保障協議会(2+2)において、新たな日米防衛協力の指針(新ガイドライン)関連法案の早期成立と、弾道ミサイル防衛(BMD)構想の共同研究で合意した。十一月の臨時国会で、関連法案成立をめざす動きもある。米国の「東アジア戦略」に追随し、アジア諸国と敵対する新ガイドラインの具体化に反対する闘いを発展させることが、早急に求められている。安保体制や新ガイドラインの危険性などについて、前田寿夫・元防衛研究所第一研究室長に聞いた。


 日米安保条約は、日本にとって有害なもので、なくなっても日本にとって痛くもかゆくもない。むしろ安保があるからこそ、そこからさまざまな問題が派生している。

 日本に対して脅威があるとすれば、それは周辺諸国との間で起こるはずだが、日本と周辺諸国との間には、何ももめ事となるようなものはない。竹島や尖閣列島、北方領土などの領土問題はあるが、それを理由に相手国が攻めてきたり、こちらから攻めていくような性質のものではない。だから、日本に米軍に駐留してもらい、日本を守ってもらうような理由は一つもない。

安保破棄こそが重要

 むしろ、米軍が日本に居座っているがゆえに、そこから日本と周辺諸国の関係がおかしくなり、米軍を媒介にして日本に脅威が及んでくる。米軍が日本に居座っているのは、周辺諸国に軍事的影響力を行使し、干渉・介入するためだ。

 日本に海兵隊という「なぐりこみ部隊」を置き、いつでも周辺に侵攻できる。また、三沢、横田、嘉手納などに空軍基地を置いて、いつでも発進して東アジア諸国や中東諸国を攻撃できる。横須賀には米空母が駐留し、いつでも世界中に派遣できる。こういう態勢をとっているために、その跳ね返りとして、周辺諸国から「軍事的脅威」が及んでくる。米軍が日本にいなければ、そういったものはない。

 米軍がいつでも朝鮮民主主義人民共和国や中国を攻撃できる態勢をとっているため、相手もこれに対応せざるを得ないところに問題がある。

 日本政府は最近、北朝鮮の「ミサイル」を脅威であるかのようにいっているが、それ以上の「脅威」は中国だ。中国は核兵器をもっており、大陸間弾道弾(ICBM)も保有している。中国は北朝鮮との国境近くに中距離核ミサイルを配置し、在日米軍基地に照準を定めている。

 こういう危険な状況に、日本は米軍を支援することによって、巻き込まれている。日米安保がなければ、日本が北朝鮮と敵対する理由は何一つない。敵対関係にない国に対し、ミサイル攻撃をするなどということは、まったくあり得ない。重要なのは、北朝鮮との関係を改善することだ。

 日米安保はなるべく早期に破棄することが、日本の安全保障にとって一番よいことだ。日本は平和憲法の精神にそって、平和外交に徹することが必要である。そうしてこそ、周辺アジア諸国との間で、共存共栄関係を築き上げることができる。

関連法案に断固反対を

 新ガイドラインやBMD構想は、周辺諸国との関係をますます悪化させる。これに対しては、真っ向から反対すべきだ。周辺事態法など関連三法案が成立し、新ガイドラインに「魂」が入るようなことになれば、日本はいつでも米国の戦争に巻き込まれることになる。その結果、日本自身が壊滅の危機に瀕(ひん)することもありうる。

 もともと安保は、冷戦終結でその役割を終えている。ところが米国は、冷戦後の唯一の超大国として、軍事力で世界に覇を唱えるという戦略をとっている。米世界戦略にとって日本はきわめて重要で、安保がなくなれば、この戦略が破たんしてしまう。だから、「日本を守るだけでなく、周辺諸国の安全保障にも重要だ」として、日本の防衛だけでなく、周辺事態への共同対処が安保の役割であるがごとくこじつけて、新ガイドラインを策定した。

 米国は、世界に覇権を唱える上で日本に貢献や協力を期待しているわけで、日本としては、周辺諸国との間で激烈な緊張関係が生まれることを当然考えなければならない。

 有事の場合、新ガイドラインや関連法案によって、日本は領海・領空を越えて米軍を後方支援することになる。しかし、近代戦争では第一線も後方も区別はない。むしろ、第一線をたたくよりも後方をたたいた方が、相手に致命的な打撃を与えることができる。米軍の後方支援を担うことは、むしろきわめて危険な役割を日本が担うということだ。

BMDは米国を利するだけ

 とりわけBMD構想などは、飛んできたミサイルを撃破するというもので、八〇年代の戦略防衛(SDI)構想の今日版だ。

 SDIもソ連のミサイルを打ち落とすとしていたが、いっこうに成功のメドがたたないうちに冷戦が終わってしまった。このまま研究を打ち切れば、これまでの多額の研究費がムダになり、これまで研究によって潤ってきた軍需産業が打撃をうける。そこで、SDIに代わるものとしてBMDを考え出し、日本のカネをあてにしている。また、これを通じて、日本の先端技術を取り込もうというものだ。米国としては、失うものは何もないが、成功の目安も何もないという段階だ。成功するとしても、十〜二十年先だとされており、そんな先、国際情勢がどう変わるか分からない。

 このような海のものとも山のものともつかない研究に日本を引っぱり込んで、場合によっては一〜二兆円ものカネがかかる。こんな研究に日本が取り組まなければならない理由はない。

 先日のミサイル事件についても、米国の情報操作があったのではないか。米国が最初、ミサイルであったと情報を流し、日本政府は前後の見境もなくこぶしを振り上げた。今になって人工衛星ということになったが、防衛庁などはそれでは具合が悪いので、人工衛星説は間違いだといっている。そうだとすれば、米国の軍事情報はまったくあてにならないということになる。そのような国と共同研究をしても、米国を利するだけだ。

 今回のような場合は、まず当事国である北朝鮮に事実確認を行うべきであった。日本は米国にいいようにしてやられている。このように安保は危険なもので、破棄する運動を強める以外にはない。


まえだ・ひさお

 一九一九年生まれ。東京商科大学(現一橋大学)卒。東海大学助教授、防衛庁防衛研修所(現防衛研究所)所員。七三年より同研究所第一研究室長(安全保障政策担当)。八〇年退職。著書「市民版・防衛白書」(講談社文庫)など。


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