980725


米GMストライキ

「大競争」の犠牲押しつけ拒否

日本女子大学教授・秋元 樹氏に聞く




 六月に始まった米ゼネラル・モーターズ(GM)部品工場における全米自動車労組(UAW)のストライキは、米国全土と米国経済に大きな影響を及ぼし、さらに拡大する勢いである。この背景には、労働者に犠牲を押しつけ、世界的大競争に勝ち残ろうとする、「ビッグ3」など多国籍企業の攻撃がある。UAWの闘いは、これに対する重要な反撃である。UAWの闘いの背景などについて、秋元樹・日本女子大学教授に聞いた。


 今回のUAWのストライキは、GMの部品製造の外部委託(アウトソーシング)と、それに伴う二百人の合理化が直接の発端だ。六月初旬から、ミシガン州の二つの部品工場がストに入った。

 だが、こういう地域的なストライキは、ひんぱんに起こっている。九六年にかなり長いストライキがあったが、毎年といっていいくらい起きており、日本のマスコミが伝えていないだけだ。

 しかし、今回のストは二カ月目となり影響も拡大し、七月中旬現在で全米二十六の完成車組立工場、十一の部品工場が操業停止、六十六の部品工場は操業を縮小している。これで、メキシコ、カナダも含め約十六万七千人の労働者が自宅待機となっている。地域的なストが国内外に影響を与えるようになっており、米国の国内総生産(GDP)が一%下がったともいわれている。

 この間、「ビッグ3」のライバルであるフォードやクライスラーはかなり合理化が行われ、GMだけが取り残されたともいわれている。UAWの組合員はかつては百万人以上いたが、八五年には九十七万人となり、九五年には七十五万人にまで減っている。GMとしてはこの両社に対抗し、人を減らして生産性を上げなければならないという「使命」があった。

 それでもGMは外部委託をかなり前から行っており、ずっと労資紛争の種になってきた。二十年以上前には「南部戦略」といわれ、組合のない米国南部に工場を移転してきた。GMは過去二十年間で労働者を半分にしたし、今後五年間でさらに二〇%減らそうとしている。

 今回のストの発端となった外部委託計画の詳細は明らかにされていないが、おそらくはメキシコなど海外に生産設備を移転・委託するということだろう。すでに、メキシコで一番大きな企業はGMだ。この流れは米国でずっと続いているし、それに対する労働者側の危ぐがある。

 会社としては今回の紛争で労組を押さえつけ、大規模な海外への生産移転の突破口にしようとしているのだろう。五年間で労働者を二〇%削減する計画は当然、労組の強い抵抗が予想されるので、ここで労組を押さえつける方針だと思う。でなければ、たった二百人の削減でこれほどまで紛争を長期化させるはずがない。

 また組合もそうした背景を感じとっているから、ここまで闘っていると思う。さらに組合からすれば、いまは米国の景気がよく、今年の第一四半期にGMは史上最高の利益をあげた。組合にとっては「押せる」時機で、以前からの海外移転・空洞化の問題でも、ここは勝てるという読みがあったのではないか。

 だから、今回の闘争は、労資とも「勝負」とみている。それだけに、この闘争の勝敗は米国労働運動にも大きな影響を及ぼすだろう。

米労働運動前進の兆し

 米国労働運動では、九五年にアメリカ労働総同盟産別会議(AFL―CIO)で初めて会長選挙が行われ、闘う勢力の代表としてスウィーニー氏が選出された。またティームスターズ(トラック運転手などの労組)やUAWなどで会長が交代した問題が決定的で、これら一連の労組の内部「革命」があり、闘う流れができつつあった。

 さらに九七年八月、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の労働組合は十八万人が十五日間のストライキを闘い、パートの正社員化や時給の引き上げなどの要求を勝ち取った。

 これで、米国の労働運動の低下傾向が底をうったという評価もある。私は、あと二つぐらいこんな闘争があれば、完全に「転換点」といえると思っていた。

 そうしたもとで、UAWの闘いがここまできている。組合指導部が米国労働運動全体の戦略を練った結果ではないだろうが、ここまで闘争が大きくなっており、勝てば大変なことになる。私があと二つぐらいといった一つになれば、まさに米国労働運動は大きく前進するだろう。またこの闘いに勝利すれば世界的にも大きな影響があると思う。

国際的に連帯した闘いを

 ダイムラーとクライスラーの合併など、自動車産業をはじめ、多国籍企業の国際的な大競争がある。これに生き残るために、労働者に多大な犠牲を押しつけようとしている。GMの合理化計画も、その流れの中にある。そうした中で、UAWの闘いは重要な意義がある。

 UAWの大会で、カナダの自動車労組の会長が「カナダに生産設備が移転することを拒否する」と発言した。カナダとの間ではこうした「国際連帯」ができるが、第三世界との間ではできていない。現実には、海外移転に反対することや、NAFTA(北米自由貿易協定)の関税障壁問題が労組の闘争課題となってきた。

 企業活動は多国籍化しているのに、「多国籍化した」労働組合は欧州連合(EU)にすらない。「万国の労働者、団結せよ」というのは伝統的な言葉だが、生産設備が先進国から盛んに第三世界に移転している現状で、賃金や労働水準の問題などでどう労働者が連帯するか、その中身が問われてきていると思う。


GMストライキの経過

6/5  GM小型トラック車体部品加工工場(ミシガン州)でUAW組合員3,400人がスト突入

6/11 デルファイ・イースト工場(ミシガン州、計器類生産)で組合員5,500人がスト突入

6/16 17完成車組立工場操業停止・縮小、44部品工場操業縮小、71,700人自宅待機、小型トラック生産ほぼ停止

6/19 クリントン大統領、「時機を逸しない形で終息するよう促したい」と発言

6/22 GM、時間外手当、出張旅費、会議費などのコスト削減を指示

6/30 GM、スト損失が11億8,000万ドルに達したと発表

7/12 GM、UAWにスト権放棄を要請、UAWは拒否

    26完成車組立工場操業停止、11部品工場操業停止、66部品工場操業縮小、166,900人自宅待機

7/14 GM、連邦地裁に仲裁求める訴訟を起こす

    4〜6月期の純利益が前年同月比81%減少

7/16 政府、連邦調停委員会(FMCS)に調停を提案

7/19 GMの小型車生産会社、サターン労組(約7,200人)がスト権確立 


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998