杉並病をなくす会・常任委員 斎藤 恵子さんに聞く
東京都杉並区の不燃ごみ圧縮施設「杉並中継所」が九六年春に本格稼働して以降、周辺住民にめまいや吐き気、自律神経失調などの症状が発生、「杉並病」と呼ばれている。原因は同中継所が排出する空気に含まれる化学物質とみられ、化学物質過敏症と診断された住民も多い。住民は同中継所の操業停止を訴えて「杉並病をなくす会」をつくり、これまでに三回のアンケート調査などを行っている。しかし、東京都は科学的根拠がないと住民の要求を無視している。「杉並病をなくす会」の常任委員であり、自身も化学物質過敏症と診断された斎藤恵子さんに聞いた。
九六年春に杉並中継所が試運転を初めてから周辺の住民がばたばたと倒れ、突然死で十一人も亡くなりました。私も五月末からのどが痛み、舌のけいれんや眼球が動かなくなったりと、今まで体験したことのない症状が起きました。内蔵や腸がつるとものすごく痛くて転げ回ってしまいます。診断で化学物質過敏症による自律神経失調といわれました。これまで健康や気を使い、家族を守る責任を感じてきたので、すごくショックでした。
夫は手や胸、背中が赤くはれて、水泡からみずが垂れました。戦時中、日本軍が中国でまいた毒ガス・イペリットガスと同じような症状だそうです。
このような被害を受けて、九六年七月に「井草の空気と健康を考える会」を発足させました。九七年十二月には「杉並病をなくす会」と名前を変え、今年四月下旬には半径五百メートル以内の住民を対象にアンケートを行いました。その結果、三百五十人から回答があり、八六・三%の人になんらかの症状が出ています。
周辺の植物も枯れたり、穴があいたり異変が起きています。それを見たとき、人間の体内で同じことが起きているのかと思いました。
なぜこんなに化学物質が出るのかというと、これまでの中継所は地上に作られていますが、杉並中継所は半地下なので、強力に換気をします。すると、例えばコップに水を張って掃除機のホースを近づけると、水を吸い上げてしまうように、ゴミの中から普通ならば出ない物質まで吸い上げられて出てきます。それが高さ八メートルの煙突から住宅街に排出されているのです。
東京都は二十五種類くらいの物質を調べて「基準値以下」としていますが、原因物質はもっと多く、複雑になっています。それに、行政は「原因が分からなければ操業を止められない」といいますが、実際は建設に百四十八億円の巨額な資金を投入しているので止められないのでしょう。
「なくす会」では操業の一時停止を求める陳情を、四千人の署名とともに都・区議会に行いました。水俣病の二の舞にしないためにも、まず操業を止めるべきです。
それに中継所はゴミを圧縮し、最終処理場に運ぶ車を減らすとされています。そしてゴミは最終処分場で分別されます。ならば最初から中継所で分別すれば有害物質も出ないでしょう。ところが都は二〇〇一年から各区に一つずつゴミ処理場を作るとしています。各区に七十億円近い施設を作るわけで、業者などのゆ着も今回の問題の一因だと思います。
ゴミ問題は経済と関係しており、非常に奥が深いと思います。日本にはプラスチックを製造する際の規制がなく、企業は「危険でも消費者が分からなければいい」という姿勢。多少不便になっても、安全に生きられるようにしなければならないでしょう。有害物質が私たちの家に向けて平然と出されているなんて、人殺しですよ。
九六年秋に品川で開かれた「水俣・東京展」を見て、水俣病を写真に撮った人がいたんだと知りました。それで私はここにいなければできないことをやろうと思って、人や植物などを撮りはじめました。十年、二十年後のことを考えたときに、誰かが一生懸命やらなければいけないって思います。ビラまきでバカヤローと怒鳴られたこともありますが、とにかく操業を止めるためにがんばりたいです。
化学物質過敏症
一定量の化学物質を摂取した結果、体が過敏になり、ごく微量の化学物質にも激しく反応する症状。医学的に未解明の部分が多い。