中部大学教授・飯田経夫氏に聞く
来日したサマーズ財務副長官は六月十八日、政府、与野党に不良債権処理や税制改革の迅速な断行を要求した。クリントン米大統領も二十七日、訪中の席で、わが国の金融システム改革を要求した。橋本政権はさっそく、不良債権処理のための「公的受け皿銀行」を、米国にならって「ブリッジ・バンク」方式で創設することを打ちだした。これは、金融機関救済のため、さらなる国民の血税を投入することに道を開こうというものである。これらの米国の要求を実行すれば、国民各層にさらなる犠牲が押しつけられ、反発は強まらざるを得ない。日米関係や日本の進路について、飯田経夫・中部大学教授に話を聞いた。
六月中旬、サマーズ米財務副長官が来日し、わが国に不良債権処理や税制改革を要求した。マスコミの中には、サマーズの要求を称して「マッカーサーの再来」「米国による対日再占領」と言うものもある。
日本は以前から「占領状態」
今回、あらためて「米国に再占領された」と大騒ぎしているようだが、こんなことはずっと以前からそうだった。米国が日本に対して勝手なことを言うのは、なにも今に始まったことではない。だから、今回騒ぐのであれば、もっと前から騒ぐべきであった。
それは、米国の要求によって、八六年に「前川レポート」が出され、日本の「経済構造改革」が始まった頃から問題にすべきことであった。日本政府の対米追随ぶりも、以前から相変わらずひどいものだ。
サマーズの要求内容にあった、金融機関の不良債権の処理についても、米国に対する弱腰の姿勢があるので、米国に何か言われたら、すぐ要求を聞いてしまう。
また日本政府も、不良債権の深刻さについてたかをくくっていたのではないか。景気が回復すれば、不良債権も自然になくなるだろうと思っていたのではないか。それは見通しが甘かった。大蔵省も銀行の経営者も、不良債権の額について隠しに隠してきたが、実際は多額なものだった。
深刻さについての判断を誤ったことについては、大いに恥じなければならない。だからといって、米国にとやかく言われてから対策をとる、ということではいけない。
現在の不況も、マスコミが言うような、内需拡大や規制緩和などの構造改革が進んでいないから起きているものではない。これまでずっと、米国の言う通りに規制緩和などを進めてきたが、景気は全然良くなっていない、というのが実際だろう。だから、今回の要求を実行しても、景気が良くなる保証はない。
現在の対米追随の政治はおかしいじゃないか、変じゃないかということを、国民もだんだん気づいてきているのではないか。
あまりに身勝手な米国
日本が極端な低金利政策をとっていることで、カネが米国に流れ、米国が株高になっている。
米国は日本にカネを調達させるというか、日本からカネを巻き上げ、経済の「好調」を維持するという形になっている。これは非常に異様なことだ。米国は貿易赤字などの赤字をどんどん垂れ流しておいて、それを全然反省していない。
このように、米国の経済運営は長年おかしいわけで、日本のお陰でもっている。それで日本に要求ばかりするとは、お話にならない。
日本は多額の米国債をもっており、米国の痛いところを握っているわけだ。以前、橋本首相や野中自民党幹事長代理が米国債の売却をほのめかしたことがあったが、外交上は、今後ともその事実をうまく使うことを考えるべきではないか。
米国債を売ってしまえば国際経済は大混乱で、日本も損害を受けるので、捨て身でなければできない。これは実際に発動すべき政策ではないだろうが、米国へのブラフ、つまり脅かしにはなる。
政府には、そのあたりを考えてやってもらいたい。現在はあまりにも外交政策がなく、そうした駆け引きがない。
日本は自主的な経済対策を
日米協調介入で円が一時一三〇円台まで上がったのに、またすぐに一四〇円台まで下がった。こういうことも、政治がきちんとしないといけない。
参議院選挙が行われているが、日米関係についてはまったく争点になっていない。だから、経済問題も、真の意味で争点になっているとはいえない。政治の場で、もっと現在の日米関係について問われる必要がある。政治家はいったい何をやっているのか。
これまでの対米追随のやり方は、日本にとって何の利益にもならない。私は反米論者ではなく、基本的には対米協調論者だが、それにしても、米国の言うことや勝手気ままな態度は度を超しており、怒りを抑えきれない。
日本のあり方として、中長期的な「脱米」で、自主的な進路をとることが必要だ。