980625


日中平和友好条約二十周年

条約守り内政不介入を

元中国大使・中江 要介氏に聞く




 日中平和友好条約は、今年で二十周年を迎える。両国の友好と関係の深まりの一方で、日米防衛協力の指針(新ガイドライン)に基づく周辺事態法案や、日本の侵略戦争の事実を否定する映画「プライド」の上映など、条約の精神にそむく動きも強まっている。また、アジア経済危機の中で、日中両国の役割は非常に重要になっている。日中平和友好条約の今日的意義や「周辺事態」の問題、新しい日中協力のあり方などについて、中江要介・元中国大使に聞いた。


 日中平和友好条約の今日的な意義は、三つある。

 一つは、東西冷戦の最中である二十年前にあの条約が結ばれたということだ。東西が激しく対立しているときに、社会主義国の中国と資本主義国の日本が、子々孫々の平和友好関係を約束したということは重要だ。現在のように世界が多極化し、いろいろな体制、いろいろな価値観が入り乱れている時代には、体制の違いにかかわらず平和友好関係を樹立できるという、この条約の先例と精神がますます意味をもつ。

 第二に、反覇権条項の意義だ。条約締結当時、「反覇権=反ソ」かどうかが問題になったが、ソ連が崩壊して反覇権の意味がなくなったかというと、そうではない。覇権主義に反対するという原点に立ち戻って、引き続き覇権主義には反対しなければいけないし、また、日本も中国も覇権を求めてはならない。

 現時点でいえば、例えば、国際通貨基金(IMF)の東アジア経済危機に対する融資の条件としているいろいろな要求が、覇権主義的だという意見がある。核兵器の問題でも、核保有国である五つの大国が特権的な地位に甘んじ、核廃絶に積極的に取り組まないのは覇権主義だという見方もできる。また、中国から見ても台湾から見ても国内問題である中台関係について、軍事介入をちらつかせるような態度は、覇権主義だと言える。その他、国内問題に対して経済制裁を課すというのも問題だし、こうした覇権主義的な態度とか行動は、まだまだ世界中にある。

 反覇権条項は今日でもなお意味があり、必要な条項だ。

 三番目は、二十年間条約を廃棄しなかったことの意味だ。条約は有効期間が十年で、その後は一年の予告で終了させることができる。しかし、日中両国とも終了させようとは言わなかったし、近い将来終了させようという意見もない。これは、日中が平和友好関係を維持しているということが、両国にとってばかりではなくて、アジアや世界にとっても有利だという認識で両国が一致しているからだ。これは、日中関係の原点でもある。

日米防衛協力と台湾問題

 日米防衛協力の指針(新ガイドライン)や周辺事態法制定の動きに対して、中国が神経質になっている。

 本来、国の防衛や防衛協力の問題というのは、第三国からゴチャゴチャ言われる筋合いの問題ではない。しかし、それが特定の第三国を具体的に巻き込むようなことが想定されているとすれば、巻き込まれる第三国が意見を言うのは当然のことであろう。

 「周辺事態」の中には台湾に対する武力介入も含まれる、と言えば、中国としては「中台関係は国内問題であり、平和的解決であれ武力介入であれ、基本的には中国の内政問題である」と言うのは当然だ。これはガイドラインがどうであるということと離れて自明のことで、日本の立場からすれば、日中共同声明や日中平和友好条約からみても当たり前のことだ。

 それにもかかわらず、中国側の懸念や批判を生むような意見を述べる人が存在するということは、共同声明とか平和友好条約がまったく読まれていない結果だと思う。

 政府は「共同声明とガイドラインとが矛盾しないように審議していく」と言うが、どういうふうに矛盾しないのかということについて、何ら具体的な説明ができない。そして、何度も繰り返して「中国側に理解を求める」と言うだけでは、中国からすれば理解のしようがないのではないか。

 共同声明の台湾関係のところを読むと、日本政府は台湾が中国の一部だという中国政府の立場を十分理解し尊重する、とある。まず日本政府が中国の立場を理解しないでおいて、一方的に中国政府に日本の立場を理解しろ、と言っても無理だ。日本が中国の立場を十分理解し尊重し、日本は中国の内政には介入しないと言えば済むことだ。

 この点では、「台湾関係法」という国内法をもっている米国と日本とは同じではないことを忘れてはならない。

アジア危機に日中は連携を

 アジア経済危機の中で日中両国が果たすべき役割は、二つある。

 一つは、今の危機がより深刻化しないのは、中国が元を切り下げないからだと言われているし、中国もそれを理解している。本当は元を切り下げて輸出を増やしたいが、切り下げないでがんばっていることを理解してほしい、と中国は思っている。中国ががんばっているうちに、早く日本は自分の景気を回復しないと、東アジア全体の経済の回復にはならない。アジア経済危機の解消のために日中が協力するのは、アジアにおける日中協力のあり方として、重視すべき問題ではないだろうか。

 もう一つ。アジアの経済危機で困っている国々へのIMFの融資条件には、欧米にとっては当たり前に見えても、開発途上のアジアの国々からすると、無理難題といえるようなものが含まれている。その矛盾が具体的に現れたのが、今回のインドネシアの政変だ。

 経済が弱い国に対する対応として、IMFのような態度は覇権主義的で、また、それはIMFを操っている米国の経済覇権主義だという声もあるくらいだ。そういうことであれば、日中平和友好条約にある反覇権条項に基づいて、日本も中国もそういう覇権主義と闘わなければならない。その後、IMFも条件の緩和を検討しているようだが、こういう点について、中国とよく話し合うのも、新しい日中協力のあり方ではないかと思う。 


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