980615


非同盟諸国はインドの立場を理解

差別ない条約で核廃絶を

駐日インド大使・シッダールタ シン氏に聞く




 インド、パキスタン両国の核実験によって、米国など五大国の核独占体制は崩壊した。国際政治は明らかに、大国に不利に、中小国に有利に変化している。こうした中でインドは、全面的核廃絶のために、核拡散防止条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)などの差別的な条約によらない世界的な会議を呼びかけている。インドが核実験を行った意図や核廃絶への提案などについて、シッダールタ・シン駐日インド大使に聞いた。


 安全保障はインドにとっても、またほかのどの国にとっても、核に頼らないものがよりよいものだ。

 インドが核全面廃絶に向けて努力してきたことは、五四年に世界的な核廃絶に向けたプランを提示してから四十年間、インドが行ってきたことをみれば明らかだ。

 わが国は七四年、核廃絶プランから一歩踏み込み、核実験を行った。しかし以降二十四年間、この核の能力を核兵器へと転用することをしないできた。

 また、インドは核の技術、装置、物質、ノウハウを他国に移転したことがない。この点で、NPTに加盟しているいくつかの国よりも、わが国は責任ある態度をとってきたと言える。いくつかの国々は核の供給国となっており、そういう国が現在、インドを非難している。

 しかし二十四年間、核兵器の拡散や核能力の移転が起こり、核兵器の数が世界的に増大した。核保有国は核廃絶の努力を怠り、また、インドの言い分をどこの国も聞いてくれない、という状況が続いてきた。こうして、インドの安全保障が脅かされてきた。

 そして最近、二つのできごとが核の状況を悪化させた。それが、九五年のNPTの無期限延長であり、九六年のCTBT締結だ。

 従ってインドは、自国の安全保障のために対応を迫られていた。これが、インドが核実験を行った理由だ。

多くの国々はインドの立場を理解

 わが国は依然として核のない世界を望んでいるし、核廃絶のために努力を続けている。

 日本のマスメディアでよく聞かれる論調には二つのものがある。一つはほとんどの意見だが、インドの核実験はまったく受け入れられないというものだ。もう一つは、幾人かの人びとがNPT、CTBT体制が「二重基準」であると述べている。日本政府がより積極的に、核保有国に対して核廃絶を要求すべきだという論調もある。

 他の国々の反応だが、核実験直後にコロンビアで行われた非同盟諸国会議では、ほとんどの国がインドの核実験に理解を示し、非難は聞かれず、非難決議もなかった。

 現在、インドを批判している国々は、核保有国であるか、その核の傘の下にある国々だ。核保有国である五大国の間では、インド、パキスタンが核実験を停止すべきだという点においては一致がある。違いがあるのは、両国にどのような態度で臨んで実験を停止させるか、という点だ。

 経済制裁についてだが、米国の制裁内容がどのようなものになるか、まだ分からない。日本政府は「制裁」ではなく「措置」と言っているが、事実上は制裁だ。これは、中国が核実験を行った際のものよりもより深刻なものであろうと予測している。

 インドと日本の間の経済関係が良好に発展している時期にこのような制裁が行われることに、私は失望している。経済制裁の結果は、日本にとってもインドにとってもよくないものだろう。

 日本には、インドがこれまで実験を自制してきたこと、そして両国間関係の緊密化が両国にとっても、アジア、世界にとっても利益になるということを考慮に入れてほしいと思っている。多くの国々は、インドへの経済制裁は非生産的なものだと考えている。

世界の努力を核廃絶を

 核実験を行った後、わが国は声明を発表した。インドが世界的核廃絶と平和に熱心に取り組むことを表明したものだ。この声明には、いくつかのポイントがある。

 まず、わが国については、今後、核実験をインド自身の判断において行わないというものだ。そして、この実験の自発的な停止というものを、国際規約によって世界的な体制にしていきたいというものだ。これはCTBTによるものではなく、交渉による自主的なものであるべきだ。

 声明の二点目として、兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約に参加する用意があるというものだ。ジュネーブで開かれた軍縮会議では、まだ議論の段階だが、議論にも、そして次の交渉にも進んで参加したい。

 三点目に、核関連技術や核物質の他国への移転を厳しく制限する。

 四点目として、核の先制不使用協定を含め、あらゆる問題でパキスタンとの対話を再開するというものだ。

 さらに世界に向けて、わが国政府は核兵器会議の開催を呼びかけている。この場で、核不拡散と核廃絶について話し合おうというものだ。

 この提案には、生物・化学兵器禁止条約という前例がある。この条約と同様、普遍的で世界的で、非差別的な条約が、核兵器についてもつくられるべきだ。これが、わが国政府が世界に提案している核廃絶のプランだ。この提案は、すでに、六月四日のジュネーブ軍縮会議で発表した。

 核不拡散と核廃絶の問題は、世界の一部の国々が解決できるものではなく、世界的に取り組まれなければならない。

 日本国民が核兵器について非常に強い感情を抱いていることは承知している。インド政府も国民も、核のない世界を望んでいる。

 日本とインドの関係は非常に重要なものだ。インドと日本の友好関係はお互いの利益になるもので、日本の人びとがインドとの友好関係を願っていることを信じており、われわれもそのために努力している。


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