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東条英機を賛美する映画―プライド

侵略戦争の「免罪」を許すな

歴史事実の改ざんに反対しアジア諸国と真の友好を

南京大虐殺六〇カ年全国連絡会世話人・松岡 環氏に聞く




 A級戦犯の東条英機を「英雄」にまつりあげ、侵略戦争を「正義の戦争」と賛美する反動的な映画「プライド―運命の瞬間(とき)」(以下、「プライド」)が五月二十三日、全国で公開され、国内外から抗議の声が広がっている。南京大虐殺について証言や資料を掘り起こしている南京大虐殺六〇カ年全国連絡会世話人の松岡環氏に、映画への批判や歴史認識問題などについて聞いた。


 南京大虐殺六〇カ年全国連絡会は「プライド」に対し、製作と公開に抗議してきました。抗議文を発表後、各地の市民団体、労働組合に抗議を呼びかけ、東映本社に抗議ハガキを送る取り組みをしています。五月十三日には中国から侵略戦争の被害者を呼んで、大阪で集会を持ち、抗議の緊急アピールを行いました。

 同連絡会は昨年十月、南京大虐殺情報ホットラインを開設し、南京戦に参加した元兵士たちに手紙を出し、電話による証言をお願いしました。新聞やテレビの報道もあり、南京大虐殺を直接体験した方からの証言が十八件ありました。

 その後、休日を利用して調査を続け、三十人以上の証言を集めました。当時の写真や虐殺を記した日記も手に入りました。ある人は、初めて人を殺したときのことを「数日して普通の状態に戻った時、何でこんなことしてるんだろうと思った。平気でいられるものとは違う」と言ってました。今後、聞き取りや資料の調査をさらに進め、これらの証言を本にまとめて、発表したいと思っています。

 中国の農村部へ行くと、いまだに家の壁に弾痕が残っている村もあり、肉親を奪われた人びとは日本軍が行った暴行、放火、強姦、集団虐殺などのむごい行為を昨日のことのように覚えています。踏みにじられた人たちの心情を考えたら、それがウソだったとか、大げさに言ってるんだとか言う人びとの存在が恥ずかしく思われます。日本側からも最近、日本軍が組織的に集団虐殺したことを証明する歴史的資料が出ていますから、これらの事実をおおい隠すことはできません。

 「プライド」の製作委員会には「南京大虐殺はまぼろし」というキャンペーンを繰り返す田中正明がいますし、右翼の青年自由党党首の中村功が経営する東日本ハウスが十数億円の資金を出しています。彼らは、藤岡信勝などの「自由主義史観」との結び付きが強く、歴史の事実を改ざんしようという政治的な思惑で、意図して映画製作に参加しています。

 東映は「東条という人物像を浮かび上がらせた」と言っていますが、東条英機のせりふには、南京大虐殺は「わが皇軍ができるはずない」とあり、さらに東京裁判でのパール判事(裁判ではなく、日本は自らの力で自分の罪を償えと主張したインドの判事)の都合のいい発言だけをとり上げて侵略戦争を免罪しています。

 このように、「プライド」は、南京大虐殺などの歴史事実を明らかにしようとする人間にとって、絶対に許せないものです。

 中国では「日本で侵略戦争を賛美するとんでもない映画が公開される」と問題になっています。中国をはじめとするアジア諸国には、つい五十、六十年前の戦争で日本から被害を受け、未だに苦しんでいる人がたくさんいます。日本は敗戦後も、朝鮮戦争、ベトナム戦争などによって「繁栄」してきたわけで、こんな映画をつくって、本当に恥ずかしいことです。こんな映画を許していては、アジアの民衆と友好関係は築けません。

 友人には、「プライド」を見に行かないように呼びかけています。見る側の人間とって、つくる側の意図はみえにくいものです。

 ある大学で、南京大虐殺についてアンケートをしたときに、「南京大虐殺はなかった」と答えた人たちを調べたら、田中正明など「まぼろし派」の本を読んでそう思っていた、と答えました。なにも知らないでこの「プライド」を見た人は、「南京大虐殺はなかった」と思うようになってしまうのではないでしょうか。いくら映画とはいえ、最初から疑ってみる人はあまりいませんから。

 「いつか来た道」とよくいいますが、真実を知ろうという動きをねじ伏せる「操作」をすごく感じています。また、インドネシアの暴動で邦人救出の名目で自衛隊が派遣されましたが、ことが起こればすぐ動けるように訓練をやったということでしょう。このように、大衆が気づかないうちに既成事実が積み重ねられ、組み立てられた中に入れられてしまうのです。

 だからわれわれは絶対負けられないし、いつまでも負けていられないという思いでいっぱいです。


映画「プライド―運命の瞬間」に関する内外の動き

五月九日
 中国外務省が「東条の功績を讃える内容に衝撃と憤りを覚える」と発表。
 人民日報「東条英機は無実であり、日本民族の誇りだ、と公然と宣伝している」「戦犯美化は許されない。映画は日本の右翼風潮拡大の産物」と紹介。

五月十一日
 東京・帝国ホテルで自民党議員向け試写会。七人の閣僚を含む衆参国会議員二十八人が参加。
 奥野誠亮元法相「(欧米の)植民地(支配)で苦しんだアジアの安定をはかる戦争だった。臆することなく大東亜共栄圏(をめざした戦争)といっていい。南京事件はでっちあげだったといってもらいたいたいくらいだ」

五月十二日
 米国ロサンゼルス・タイムス「米国人の反日感情をあおる映画」と紹介。「東条は戦争犯罪人というより、戦犯に誤解された老人として描かれている」。

五月十四日
 韓国・朝鮮日報「東条英機を英雄視、日本、映画で歴史歪曲」と紹介。

五月十五日
 北朝鮮労働新聞「日本での第二の東条出現と軍国主義侵略が、遠からず現実になる」と警戒を表明。

五月十九日
 日中友好協会全国本部「歴史を歪曲するもの」とアピールを表明

五月二十三日
 中国・人民日報は、南京大虐殺祈念館館長の寄稿文を紹介「大虐殺の事実を否定し、中国人民の感情を再び傷つけるもの」と強く抗議。大虐殺の被害者らが二十三日南京で集会を開き、厳しく批判したことを報じ、東条の軍歴を紹介。


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