980415


ガイドライン関連法案

対米追随やめアジア重視を

米軍補完の有事体制ねらう

軍事評論家・藤井 治夫氏に聞く


 政府は四月八日、昨年九月に締結した日米防衛協力の指針(新ガイドライン)を具体化する有事法制案を与党三党に提示した。それは、周辺事態法(仮称)制定などから成り立っており、四月中の国会提出をもくろんでいる。橋本政権は、米国の「東アジア戦略」に忠実に従って、戦略同盟体制の軍事的整備をねらっている。アジアを敵視するこうした策動を、広範な国民的運動で阻止しなければならない。同法案の内容と危険性などについて、軍事評論家の藤井治夫氏に聞いた。


 昨年九月に新ガイドラインが締結され、政府はそれを実効あるものにするために法整備をもくろんできた。

 今年初め、政府は新法の制定は行わず、自衛隊法の改正などで乗り切ろうとしていた。しかし、これに米国が圧力をかけた。新ガイドライン締結時に、米国防総省高官が「八カ月ぐらいで法整備をしてほしい」と述べている。つまり、今通常国会中の五月末までだ。

 現在、提出されている新法や法改正は、参議院選挙を前に対米公約を果たすための最低限のもので、選挙後にはさらに各種の法改正などがひかえていると思って間違いない。現在の法改正を「たいしたことはない」と思ってはならない。政府は国民の抵抗が大きくならないように、これらをじわじわと進めようとしている。

日本全土が動員体制へ

 今回の有事法制案は、新法として周辺事態法の制定、自衛隊法改正、日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定からなる。あわせて、国連平和維持活動(PKO)協力法の改正や統幕議長の権限拡大のための法改正も進められている。さらにいえば、省庁再編や内閣機能の強化、盗聴法(組織的犯罪対策法)や労働基本法改悪なども、臨戦態勢づくりのためのものでもある。

 周辺事態法には、輸送や補給などの後方支援、船舶の検査(臨検)、空港・港湾などの施設使用、米兵の捜索・救援などが含まれる。

 後方支援は「戦闘地域と一線を画した地帯で行う」などと言っているが、こんなことは不可能だ。後方支援は戦争においては重要視されており、かつ危険なものである。これは、第二次大戦で米軍が日本の商船を魚雷攻撃したり、空襲を行ったことでも明らかだ。戦時国際法でも、後方支援を行う国は「交戦国」だと規定されている。そしてこれらすべての活動において、武器使用を認めている。武器使用を前提に自衛隊が出動すれば、相手国はどう受けとるだろうか。まさに、自衛隊は米軍の補完勢力として戦闘を行うことにほかならない。また、物資輸送などでの民間協力について協力要請規定を設けている。政府は「罰則規定は設けない」としているが、自衛隊員の命令違反に対しては罰則規定があるし、民間でも災害救助法が適応される天災などの場合には、罰則規定がある。こんなバランスがとれない状態ですむはずがない。

 さらに、「周辺事態」かどうかや具体的な「実施計画」は政府が判断し、国会には事後報告するだけとなっている。自衛隊の「防衛出動」では事前の国会承認が必要で、「治安出動」の場合は二十日以内の国会承認が必要となっているのに、「周辺事態」の場合にはこのチェック機能がない。憲法は完全に骨抜きにされ、「国権の最高機関」としての国会さえ無視される。

 九六年十月にACSAが締結されたが、現在これは有事の場合を除いており、また物品の融通は自衛隊と米軍の間だけだ。今度のACSA改定では、これが有事、さらに民間や地方自治体にも拡大される。こうなれば、米兵は「身体ひとつ」でやってくれば、あとの準備は日本がやる、ということになる。

 だがすでに、米軍の演習の際に自治体などの公的機関や民間を動員する動きがでている。民間のバス会社が、演習へ向かう米兵を乗せるなどだ。まさに、日本全体が米国の戦争に協力させられるのが、新ガイドラインだ。

 自衛隊法の改正は、在外邦人の退避活動に、従来の自衛隊機とともに、自衛艦を使用できるようにするものだ。

 PKO協力法の改正は、従来自衛隊員個々の判断に任されていた武器の使用を、上官の命令を基本とするものに変えるものだ。これは憲法で禁じている組織的武力行使にほかならず、また上官の命令は拒否できない。拒否すればクビになるだけでなく、刑事罰がかかることになるだろう。

国民運動がますます重要に

 新ガイドラインや有事法制は、「東アジア戦略」にそって、米国がアジアを牛耳るための道具だ。冷戦後、米国は「協調」と「介入」という両面から中国をマークしており、アジアへの米軍十万人配備は、決して朝鮮半島だけをターゲットにしたものではない。日本政府が何と言おうと、米国は台湾海峡有事を「周辺事態」に含めている。そのための戦争拠点は沖縄と九州で、沖縄の基地だけでなく福岡などの民間空港も活用される。

 また、これには日本のアジア・シフトの動きを押しとどめ、米国のいいなりにさせようという意図もある。

 日本は「再びアジアと戦わない」という姿勢が肝心で、もっと積極的な姿勢でアジアを重視し、米国の砲艦外交を抑える主体性が必要だ。

 また、どうしても取り組まなければならないのは、沖縄の基地問題だ。沖縄の基地問題は、安保や外交の問題、また人権の問題でもある。沖縄の面積当たりの基地負担度は本土の五百倍で、これはあまりに不平等だ。最近では「基地を本土に移せ」という声もあるくらいだが、米軍基地撤去の国民運動がますます重要になっている。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998