イラク政府とアナン国連事務総長は二月二十三日、「アナン事務総長がイラク経済制裁の全面解除の早期実現を国連安保理事会に喚起する。イラクは査察を受け入れる」ことに合意し、米国の不当な武力行使は当面回避された。これはイラクへの武力行使をもくろむ米国にとって手痛い打撃であり、イラク政府にとって経済封鎖解除の道筋をつけるうえで、大きな前進となった。しかし、わが国は米国のお先棒を担ぎ、英国と共同して対イラク警告決議を安保理に提出した。わが国政府の行動は、中東の平和と友好協力を願う国民の願いに背くものであるばかりか、中東諸国民の願いを踏みにじるものでもある。イラク共和国代理大使のムフシン・M.アリ氏に聞いた。
われわれの立場を説明する。
米国は凶悪じみた脅しをかけているが、どこの国に対してもそういう態度は許されることではない。イラク国民は奴隷になって生きるよりも、名誉のために死ぬことを望む。
イラク政府の外交の基本原則は、米国を含めた世界諸国との友好、対等平等であり、内政不干渉、互恵の立場である。経済面でも相互に搾取しない。またどの国の内政へも干渉しないし、わが国への干渉も許さない。そうしたなかで平和な友好関係を樹立することである。
「イラク危機」といわれるものは、イラクがつくりだしたものではない。米国がイラクに生物・化学兵器などが存在するとキャンペーンして、つくりだしたものだ。イラクにとって幸いなことは、二月二十三日にアナン国連事務総長と結ばれた協定が、非常にバランスが取れているということである。
われわれがこの協定を結んだのは、決して米国の「砲艦外交」を恐れたからではない。われわれは、アナン事務総長が誠意を持ってイラクを訪問したものとして理解した。われわれとしては合意にこぎつけ、イラクの立場を守りたかった。
経済封鎖はすでに七年も続いており、イラク国民は塗炭の苦しみをなめさせられてきた。それは米国が頑強にかれらの政策をイラクに押しつけた結果である。そしてわれわれはそれに耐えてきた。
今回のアナン総長との合意だけでなく、国連決議はいろいろあるが、われわれは客観的にまた法律的にも十二分に決議を履行し、経済封鎖に終止符を打ってイラク国民が受けている今の苦しみを早く終わらせたいと考えている。それは極めて近い時期に実現できるだろう。
国連は、国連査察団に日本から二人の外交官を参加させてほしいと要請しており、日本政府は人選に入っている。日本の外交官は、イラク大統領の八つの施設を査察する特別査察団に入るだろう。すでに国連査察団がイラクに行っているが、この特別査察団の調査によって客観的な査察が行われ、その結果、大量破壊兵器などは存在しないことが明らかになり、掲載封鎖は解決するだろう。そしてイラクは国の独立、主権と尊厳を守ることができるだろう。
経済封鎖で150万人が殺された
経済封鎖によってイラク国民がどのような苦しむを受けているかについては、例えばイラクでは毎日百五十人の子どもが医薬品や栄養不足のために死んでいる。国連による部分的制裁解除によってイラクには石油の輸出代金が入っていることになっているが、米英の反対によってそれが停滞することが多い。部分解除はすでに第三期に入っているが、まだ第一、二期の契約が実行されていない。それで罪もない子どもたちが死んでいる。われわれはもっとスピーディーに、法律に基づいて契約が履行されることを望んでいる。
米英は政治的意図で、経済制裁を操縦している。米国は経済制裁を通じてイラク政府を打倒しようとしているが、それは内政干渉、国際法の蹂躙(じゅうりん)である。
イラク国民の被害は湾岸戦争後、百五十万人が死んでいる。これはまさにジェノサイド(虐殺)ではないか。イラク人民撲滅作戦ではないか。
イラクの産業はさまざまな打撃を受けている。農業では殺虫剤や農薬、農業機械がなくなり、生産は四〇%低下している。また社会基盤では発電所、下水、生産工場、道路などが破壊され深刻な影響が出ている。そのため環境面でも汚染が進んでいる。また車の部品も不足しており、多くの車が走れない。イラクは輸入もできず、イラク経済は崩壊に近い状況にある。
米英による国際法に反する不正義によってイラクは大きな打撃を受けている。
また、湾岸戦争時に米国が劣化ウラン弾を使用したために、何千人もの奇形児が生まれている。米国でも多数の「湾岸戦争ベビー」が生まれ、同じ現象が起きている。このような核汚染された兵器の使用によって、子どもたちに多大な影響が出ている。
日本との正常化を希望
こうした事態をなくすためにも、日本の皆さんの援助を期待している。
イラクと日本の関係は、一九五九年から始まったが、これまで何らの問題はなかった。七〇年代には七十、八十億ドル相当の貿易を行ってきたが、現在はほとんどゼロに近くなっている。
われわれは今回の覚書にある経済的部分封鎖解除によって石油を輸出し、その代金で医薬品や食糧を買うようにしたい。
日本の多くの団体の皆さんから支援をいただいたことにも感謝している。われわれは日本国民が経済封鎖解除を望んでいることも知っているし、そのために努力していることに感謝している。われわれは日本の友人のみなさんとの最良の関係を築いていきたい。
また日本が国連の安全保障理事会において、イラクと日本の正常化のために努力してくれることに期待している。われわれは日本の皆さん、各関係の皆さんが経済封鎖解除のために努力し助けてくださることと、日本とイラクとの正常化を希望している。