資本主義の諸矛盾が激化するなかで、青年たちは各分野で社会に発言し、社会変革の道を模索しようと努力している。地球温暖化防止京都会議へ向けて取り組んだASEED JAPAN(アシード・ジャパン・ASJ)事務局の岸本聡子さん(23)に聞いた。
―アシード・ジャパンの設立のきっかけは何ですか。
九二年の国連環境開発会議(地球サミット)へ向けて、若い世代の声を届けていこうというアシード・キャンペーンが欧米から始まり、留学生を通じて日本に広がりました。アシードというのは、「青年による環境と開発と平等と協力のための国際行動」の頭文字をとったものです。ASJは九二年に設立されました。メンバーのほとんどは大学生ですが、最近社会人や高校生も関わり始めています。
―ASJが温暖化防止会議へむけて取り組んできたことを聞かせて下さい。
まず先進国に住む者として、自分のライフスタイルを変えなければいけないと思いました。でも、市民のライフスタイルが変わっても、システムの問題に目を向けないと自己満足で終わってしまいます。それじゃ「国民への啓蒙」なんていっている政府の罠にはまってしまうので、「自分を変える、世の中を変える」という二本柱で取り組みました。
「環境家計簿」によるCO2削減キャンペーンと、温暖化を促進する社会構造についてのセミナーを同時進行で行いました。
京都会議の期間中は現地でほぼ毎日デモンストレーションをやり、記者会見で問題点を指摘しました。一番下に小島しょ国連合(AOSIS)と未来世代、トップには米国がいるという人間ピラミッド(写真)で一部の国の利害がこの会議を邪魔しているとアピールしたりしました。
―国際会議での合意について、どのように評価していますか。
とくに言いたいのは「温暖化を促進する会議になってしまった」ということ。排出権取引などの抜け穴があり、排出量がプラスになることを合法化した会議です。
それから議定書を構成する百六十カ国のうち九割は排出権取引に反対で、数値目標でも二〇一〇年までに一五%という欧州連合(EU)案に賛成していたのに、残りの米国、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの数カ国だけが反対しました。会議を邪魔していたのはこれらの数カ国なのです。
日本政府の対応ですが、政府は温暖化対策として原子力発電所の増設をあげていますが、それは温暖化の解決にはなりません。会議でも、議長国としての主導権どころか、米国と一緒になって交渉をゆがませました。国際会議ってこうやって決まっていくのかと思ったら、すごく脱力感を覚えましたね。
―岸本さん自身の問題意識はどのようなことですか。
この会議一つを見ても、不平等さが見えます。被害を受ける人たちには政治的パワーがない。だから南北問題を語らずに温暖化の問題は語れないし、米国のいう「途上国の削減義務」もおかしな話です。米国は今まで何をしてきたんだ! と言いたいですね。
―岸本さんがASJで活動するようになったきっかけは。
環境問題に漠然と関心を持ってました。空手サークルの先輩に誘われてASJの事務所に行ったのが直接のきっかけです。大学では意見を言える場がなかったし、事務所でみんなが熱心に議論するのを見て驚きました。
人にものを伝える仕事につきたいと思っていたのですが、なりたいと思っていた「先生」は、権力とか権威とはなにかと勉強しているうちに、文部省の教育を教えなければならず、つらいだろうと思っていやになった。マスコミにも疑問をもちはじめて、多くの若者が気付いてない点じゃないかと思うのですが、もっといろいろなメディアがある、草の根のメディアもあると気が付いたんです。それにその頃すごく失望感があって、自分は社会的な評価が低いと思い込んでいました。日本は学歴でしか評価されないじゃないですか。自分の能力や現実と一致しないように評価されることへの不安とか、自分の能力への不安とかいろいろな不安がありました。そんなときに、市民運動があったんです。
それから、世の中には矛盾がたくさんあって、うまくいってることなんて一つもない。問題を起こしている人と被害を受けている人が必ずといっていいほど遊離している。ちょうどアメリカへ行ってネイティブアメリカンの人たちが強いられている苦渋や黒人居住区に有害廃棄物の工場が建つこととか、いわゆる環境問題だけでは語れない問題があること、不公正の問題を教えられた。環境問題は現象として起きているに過ぎなくて、意思決定の構造などのシステムの問題で全ての問題はつながっている。それに気付いたときにすごく触発されて、これは一生生きていく間の長い課題であって、どういう角度からでも取り組んでいけると思いました。
自分のモットーとして、楽しいということと、常に言いたいことを言えること、信頼できる仲間がいるということがあれば私は生きていけると思っています。
―今年の活動と抱負を聞かせて下さい。
問題を認識した人たちが、いかに行動に移せるかということが重要なことだと思います。
ASJがつくった行動計画では、社会への接点として学校や会社を変えていくことや、グローバリゼーションなどの問題に取り組んでいくことを盛り込みました。
グローバリゼーションに対する課題ですが、弱者の視点や、社会的・環境的な評価をきちんとしながら、多国籍企業の思い通りにやってはならないという意識があるので、これに取り組んでいきたい。
個人的には長期的な展望を持って、キャリアを磨いていきたいです。自分の能力を高めていくとともに、国際的なネットワークを強化していきたいと思っています。
ASJのAはアクション(行動)ですから、行動することを伝えていきたいと思います。