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労働新聞 2007年10月15日号 インタビュー
貧困は「自己責任」ではない
「格差」より「貧困」
解決の議論を
反貧困ネットワーク正式発足
雇用・社会保障の崩壊許さない
湯浅 誠・
反貧困ネットワーク事務局長に聞く
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改革政治の下で進んだ雇用の不安定化と社会保障制度の崩壊により、国民の貧困化が進んでいる。そうした中で今年、貧困問題をテーマに労組、市民団体や個人などが貧困の解決をめざし、三月と七月に大規模な集会を開催、貧困にあえぐ国民の現状を告発するとともに、その原因を「自己責任」に帰す政府やマスコミに対し「貧困を生み出す政治の問題」と反撃した。そうした取り組みを通じて十月一日、反貧困ネットワークが正式に発足した。ネット結成の狙いと成果などについて、湯浅誠・反貧困ネットワーク事務局長に聞いた。
どの団体も避けて通れぬ貧困問題
当事者の必要に沿う枠組みづくりへ
私は、野宿者あるいは「ネットカフェ難民」と言われているような広い意味でホームレス状態にある人たちの相談を受けたり、自立生活に向けた支援などを行っている。そういう自分にとっては貧困の問題というのは非常に「身近な問題」だが、別の課題に取り組んでいるさまざまな団体にとっても貧困の問題の解決を迫られるような状況が増えている。
例えば、多重債務の問題などは典型で、借金を抱えて多重債務状態になってしまった人は、「借金をなんとかしたい」と弁護士さんに相談に来る。弁護士さんも「借金をなんとかしましょう」と手続きをする。しかしその借金問題が解決して、「消費者金融から借りたらどうなるか、よく分ったでしょう。二度と借りちゃ駄目だよ」と言われて帰っても、結局また何カ月かしたら金を借りてしまう人が後を絶たない。これまでは弁護士さんも「そこまでは面倒見きれない」と切り捨ててきたわけだけれども、そのうちに「もともとの生活が成り立つようにしないと、多重債務の問題も根本的に解決しない」と気付き始めた。
労働組合の場合も同じで、非正規社員などが労働の相談に来て、悪質な残業未払いや不当解雇があり、その問題解決に取り組もうという時にも、必ず「解決するまでの間どうやって生活するのか」という問題に突き当たる。
そういう問題が各分野で意識されている時に、たまたま私が「貧困の問題に取り組むネットワークをつくらないか」と呼びかけて回った。それぞれのところで機が熟していたんで、「じゃあ、いっしょにやろう」ということで枠組みができた。
あらためて考えると、「○○問題」というように切り分けているのは運動の側だ。例えば、ある女性が夫の暴力から逃げてきて、離婚して、母子家庭になって、日雇い派遣で働いて、生活できないから福祉事務所に相談に行ったら「まだ働けるでしょ」と断られて、借金して、多重債務になって…このように貧困状態に追い込まれている人にとって、この問題は労働の問題なのか、福祉なのか、多重債務なのか、その分類はあんまり関係ない。生活を、貧困を何とかしたいというのが第一で、そうした必要に見合った形の枠組みづくりは長く求められていたことでもある。
集会通じ顔の見える関係に
労働組合との関係は心強い
ネットワーク結成に向けて、まずは「今年三月ぐらいに大きな集会をやろう」ということで、それに向けての実行委員会ということで集まった。最初の集会が終わった後、「集まりをこれで終わりにするのはもったいない」と恒常的な団体に向けてつくり直そうとなった。
反貧困ネットとしての取り組みは今のところ二回の集会を行っただけだが、その過程で人びとが集まって顔を合わせることによって、いろんなところで副産物が生まれている。
特に労働組合の人たちとの連携は、こちらにとっては心強い。労働問題の相談機関は以前から知ってはいるが、相談者に「そこに行ってごらん」と紹介しても、そこでどういう対応をされるか分らないので、こちらとしても「とにかく行ってみたら」ぐらいにしか提案できないし、それでは本人もなかなか行く気になれない。しかし、ある程度顔の見える関係ができてくると、「あの人はちゃんとやってくれる」と自信を持って薦められるし、向こうも知り合いであるこちらから紹介されたとなると、それなりに丁寧に対応してくれる。
反貧困ネットは正式発足してまだ間がないが、貧困の問題をさまざまな団体がお互いの専門分野を生かして協力し合って解決するという連携は、すでにいろいろな形で始まっている。
これからも引き続き、共同で社会に向けて発信する取り組みとともに、先駆的活動などを共有できる機能を持つ枠組みとして、恒常的に続けていければと思っている。
構造問題隠す自己責任論に反論
偏見の負の連鎖を変える契機に
反貧困ネットの集会は、この種の取り組みが珍しいということもあったのか、メディアも幸い大きく取り上げてくれ、社会的に注目されたと思う。
この中で、私たちは「貧困を増大させた政治的・社会的責任が、巧妙に、個人の自己責任の問題へと転嫁させられている」と訴えた。この自己責任論への反論に対し、共感の声が多くの人から寄せられた。
七月の集会の時にも、事前の問い合わせの電話で「自分の声を集会参加者に届けてほしい」「私の経験を伝えて」などの声が相次いで寄せられた。普通事前の問い合わせは会場の場所や時間を尋ねるなど事務的なものが多いので、今回のことは印象的だった。
私たちのキャンペーンにより、今まで声を出せなかった人に「自分も言っていいんだ」というような気持ちを一定は与えられたのだろう。
このように当事者自身が声を出していくことは非常に大切なことだと思う。
得てして貧困状態まで追い込まれている人というのは孤立していることが多く、話のできる相手もいない中で、自信を喪失させ、「おれはダメだ」と日々自分を責めている。生活保護の人でも、ホームレスの人でも、世間の差別的な対応を受けたり偏見の視線にさらされて自分の声を出せなくなってしまう。それにより当事者の声が聞こえなくなり、いっそう偏見を育てる結果となる。
こうした負のサイクルを反転させなければいけないが、そのために当事者自身が声を出して変えていくということは勇気のいることだ。障害者の課題などでは、当事者がそういう壁を突破してガツンと世間に対してものを言い、それに対して世間が考えて応え、それによってさらに発言する当事者が増えるといった状況がつくられた。しかし貧困の課題では、まだまだ発言する人は限られている。
この間の取り組みの結果、「声を上げていいんだ」という雰囲気が少しずつ広まってきている。今はある種のブームかもしれないが、その気運に乗じて当事者の声をいっそう発信し、悪循環を絶ち、貧困の問題に多くの人に関心を持ってもらいたい。
ゆあさ・まこと
一九六九年東京生まれ。九五年からホームレス支援に携わる。NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長、便利屋あうん代表、ホームレス総合相談ネットワーク事務局他を兼任。著書に『貧困襲来』(山吹書店、〇七年)など。
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